地味な花だけど、強い香りが好みなのです
(EOS kiss X9 2022.5)
今年の母の日、花ではなくリンツのチョコレートをくれた娘。
バイト中にたまにこれを1つぶ2つぶ…と、自分と同年代の子のお母さんでもある上司から頂くらしい。
「年明け◯時間ぶっ続けで授業した後のこのチョコの味が忘れられない」んだそう。
私にも同じ癒しを味合わせてくれたかったんだろう。
コロナ禍前、娘はカフェ(某チェーン)でバイトをしていた。
大学に入学してからは、お世話になった予備校にそのまま雇って頂いていたのだけど、3年生になってミナミのそのカフェでバイトをしだした。
私は心配した。
家で家事をする娘を見ている分に、申し訳ないが飲食店でテキパキと仕事をこなす彼女が想像できない。
嫌な記憶が蘇る。
私は高校生の時、短期間だけどイートインのケーキ屋さんでバイトした事があった。
要領が悪く、よく店長や店長夫人に他の子とあからさまに比べられた。
私の娘なので、同じ顛末になるんじゃないかと思ったのだ。
そんな私の心配は杞憂に終わった。
楽しそうにバイトへ通う娘。
その頃、ちょうど学校では色々としんどい事があったそうだが、更に観光客で混雑するそのカフェでのバイトという負荷に根を上げるどころか「癒される」と言っていた。
こうなると、娘が働く姿を見てみたくなるではないか。
「あんたの仕事してるとこ見に行っていい?」と言うと「ええよ」と言うので、日曜日のお昼過ぎに、行ってみた。
ちょうど娘がレジを担当している時だった。注文を待つお客さんの列が外まで続く。
やがて私に順番が来て娘は目が合うとニッコリ微笑んで注文を聞く。
「うちの母です」と周りの人に紹介してくれる余裕を見せ、私の方が慌てて「い、いつも娘がお世話になってまっ…ます!」と噛んでもうたり。
トレーを受け取り、空いている席につく。コーヒーを飲む。
何とも言えぬ高揚感と安堵の気持ち。最高のコーヒータイムだった。
私ががんに罹患している事が判ったのはその半月後。
そして、ほどなくしてのコロナ禍。
カフェは自粛休業。
明けても、娘は私への感染を恐れなかなか行けず、
学校からの行動に関する注意もあり(大学病院の患者さんへの感染の抑止の為)
そのまま、娘は大好きなバイトを辞める事になった。
娘は今もバイト先に恵まれているものの
やはりあの時の事を思うと切なくなる。
私の不甲斐なさも相まって。