現実逃避的に観る『ノマドランド』

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都会の公園の小さな森にて

(EOS kiss X9 2022.10)

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“歳をとる”という事は若さを“失う”事では無いんだって、久しぶりにそんな事を思い出した。

私の中には10代の自分、20代の自分、30代の…がそのまま居続けており、それは何十年経っても同様。みたいな。

アマプラで『ノマドランド』を観た。フランシス・マクドーマンド贔屓で、映画館で観たかったんだけど、コロナの恐怖には勝てなかった。

これ以降、映画の感想です。ネタバレは無いけれどドキドキしながら観たいという人にはおすすめしません。

序盤、いきなりAmazonのでっかい倉庫が出てきてびっくりした。そこで働く60〜70代と思わしき人達。食堂ではザ・スミスの歌詞を身体中に彫った女性を囲んで「彼(モリッシー)の詞はいい」と頷きあう。

彼ら、彼女らはキャンピングカーやバンで生活し、仕事を求めてアメリカ中を旅する高齢のワーキャンパー。Amazonとの契約も繁忙期を過ぎたら切れる。

原作は『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』というノンフェクション本だけど、現実はより過酷なようだ。貧困ゆえ車上生活を送る高齢者がアメリカでは増えているらしい。

ただこの映画では、主人公達が、喪失感や病気など様々なものを抱えているとはいえ、中流家庭の育ちだったり、教養があったり、病院へ行くお金が払えたり(アメリカで、です)、「一緒に暮らそう」と言ってくれる子や家族が居たり、恵まれている人達(かつ、出会う人、皆、老いも若きも善人ばかり)だ。

だからこそ雄大アメリカの大自然の中、最低限の好きなものだけを持ち自由に旅する彼らの生活を羨ましいと心から思い、憧れる事が出来た。(労働は本当に大変そうですが)

嫌味では無い。作品としては好きで多分、繰り返し観ると思う。

あと、この映画を観てから、大事なものだけ身の回りに置いて暮らそう、という意識がより強くなった。大事なものこそ奥へしまいがちだから。